ティルカヨとは?100年以上ぶりに確認された新種の野生ネコを解説

新種の猫「ティルカヨ」を示す猫の足跡とゲノム解析を表現したDNA二重らせんの画像
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2026年9月17日、ボリビアのユンガスに生息する小型の野生ネコが、新種 Leopardus tilcayo として学術誌「Current Biology(カレント・バイオロジー)」で正式に記載されました。

現生のネコ科で、これまで種や亜種として提唱されていなかった新しい種が正式記載されるのは100年以上ぶりとされています。

National Geographic(ナショナル・ジオグラフィック)が紹介する飼育個体は、頭胴長約46cm、体重約1.4kg。平均的なイエネコより小さい、ヒョウ柄のようなロゼット模様を持つ野生ネコです。

ただし、2026年に突然初めて人間が見つけた動物という意味ではありません。 ユンガスの住民には以前から「tilcayo」と呼ばれており、2016年には研究者の目にも留まっていました。今回、ゲノム解析によって別種であることが科学的に確認され、正式に名前が付いたというニュースです。

ティルカヨを先に整理
学名Leopardus tilcayo
本稿での表記ティルカヨ
生息地ボリビアのユンガス
分類ネコ科・Leopardus属のタイガーキャット類
大きさ代表的な個体で頭胴長約46cm・体重約1.4kg
正式記載2026年9月17日
新種と分かった決め手形態差に加え、全ゲノム解析で独立した系統を確認
野生個体数不明
IUCN(アイユーシーエヌ)での独自評価現時点では未確定
目次

新種の猫「ティルカヨ」が正式に記載された

学名はLeopardus tilcayo

新種の学名は、Leopardus tilcayo です。

研究チームは英語の一般名(コモンネーム)としても「tilcayo(ティルカヨ)」を提案しています。これは、ボリビアのユンガスで地域住民が昔からこの野生ネコを呼んできた名前を残したものです。

9月18日時点で、統一された日本語の標準和名は確認できません。この記事では、現地名・英語一般名の tilcayo に合わせて「ティルカヨ」と表記します。

ボリビアのユンガス雲霧林に生息

現在確認されている生息地域は、ボリビアのユンガスです。

ユンガスはアンデス山脈東側の斜面に広がる、霧や雲に覆われることの多い山地林です。

論文で新種の基準となるタイプ産地は、ボリビア・ラパス県ノル・ユンガスのアラパタ村付近、標高約1,570mとされています。

ティルカヨはどんな猫?

イエネコより小さい個体もいる

National Geographic(ナショナル・ジオグラフィック)が紹介する、センダ・ベルデ野生動物保護施設で暮らすオスは、頭胴長約18インチ(約46cm)、体重約3ポンド(約1.4kg)です。

平均的なイエネコより小さいサイズですが、これは紹介されている個体の数値です。まだ調査個体が非常に少ないため、「ティルカヨはすべて1.4kg」と一般化しない方が正確です。

淡い茶色の毛と不規則なロゼット模様

ティルカヨは淡い茶色系の被毛に、黒~濃茶色の不規則なロゼット状の模様を持ちます。耳は丸みがあり、近縁のタイガーキャット類と非常によく似ています。

原記載では、近縁種と比べてロゼットの大きさや形、被毛の長さ、尾の長さ・模様などに違いがあるとされています。

ただし、見た目だけで別種と決めたわけではありません。今回の分類を支えた大きな根拠が、次のゲノム解析です。

どうして新種だと分かった?

Leopardus属38個体の全ゲノムを比較

研究チームは、南米の小型ネコを含むLeopardus属38個体の全ゲノムを解析しました。

このうち26個体が、分類をめぐって議論の続いてきたタイガーキャット複合群に属する個体です。また、38個体の中には博物館に保存された標本からDNAを取り出した8個体も含まれます。

ゲノムを比較した結果、ティルカヨは他のタイガーキャットとは異なる独立した進化系統であることが示されました。

タイガーキャット類は5つの種として整理

今回の研究では、タイガーキャットの複合群を5つの異なる種として整理しています。

その中で新たに記載された種が Leopardus tilcayo です。さらにペルーのユンガスにいる系統については、新亜種Leopardus tigrinus antisuyo が記載されました。

タイガーキャット類について研究者は、外見だけでは区別しにくい「隠蔽種(cryptic species/クリプティック・スピーシーズ)」だと説明しています。見た目がよく似ているため、写真や外部形態だけでは、別々の進化系統を見抜きにくいグループです。

約140万年前に他の系統から分岐

ゲノム解析では、ティルカヨにつながる系統は他のタイガーキャット系統から約140万年前に分岐したと推定されています。

「140万年前に現在のティルカヨがそのまま誕生した」という意味ではありません。 あくまで、祖先の系統が別々の進化の道へ分かれた時期の推定です。

なぜ「100年以上ぶりの新種の猫」なの?

National Geographic(ナショナル・ジオグラフィック)や研究者は、今回のティルカヨを現生ネコ科の新種が新たに正式記載される例として100年以上ぶりと説明しています。

比較対象として挙げられているのが、1923年に記載されたウルグアイのパンパスネコ Leopardus fasciatus です。

「100年間、ネコ科で何も新しい発見がなかった」という意味ではありません。
この間にも、既知の集団を別種へ分ける研究、亜種を種へ変更する再分類などは行われてきました。今回が特に珍しいのは、過去に別種・亜種として提唱されていたものを単に格上げしたのではなく、科学的に未記載だった独立系統を新種として記載した点です。

イリオモテヤマネコは?「100年以上ぶり」と矛盾しない?

日本では、1967年にイリオモテヤマネコが新属新種として記載されたため、「100年以上ぶり」という表現に疑問を持つ人もいるかもしれません。

イリオモテヤマネコは当初独立種として記載されましたが、現在は環境省でもベンガルヤマネコの亜種 Prionailurus bengalensis iriomotensis として扱われています。

今回の「100年以上ぶり」は、National Geographic(ナショナル・ジオグラフィック)が説明するように、過去に提唱された種の再承認や、既知の亜種を種へ格上げした例ではなく、それまで種・亜種として提唱されていなかった独立系統を新種として記載した例という意味で使われています。

2026年に初めて見つかった猫ではない

ティルカヨは、2026年9月に突然初めて発見された動物ではありません。

地域住民は以前からこの猫を「tilcayo」と呼んでいました。

2016年に研究者が「変わった猫」の連絡を受ける

National Geographic(ナショナル・ジオグラフィック)によると、2016年に生物学者パオラ・ノガレス=アスカランス氏のもとへ、野生動物保護施設から「変わった猫がいる」という連絡が入りました。

そのオスは、地元の男性が森林近くの道路で子猫の状態で見つけ、当初はイエネコの一種だと思って自宅へ連れ帰った個体です。約1年一緒に暮らしたものの、明らかに野生動物らしかったため保護施設へ渡されました。

一次情報から確認できるのは「2016年に研究者がこの個体を知った」という時系列です。 子猫そのものを見つけた年を2016年と断定するのは避けた方が正確です。

2019年に「既知の猫と模様が違う」と気づく

その後、2019年にボリビアのネコ科動物について資料を作っていたノガレス=アスカランス氏が、撮影した個体とブラジルのタイガーキャットの資料を比較し、ロゼット模様などが一致しないことに気づきました。

研究が進み、最終的に2026年のゲノム研究で独立種として正式に記載されたという流れです。

ティルカヨはペットとして飼える猫?

ティルカヨはイエネコの新品種ではなく、野生のネコ科動物です。

マンチカンやラグドール、ベンガルなどの「猫の品種」と、生物分類上の「新種」は意味が異なります。

今回の研究は、日本での個人飼育や輸入の可否を扱ったものではありません。そのため、この記事では「日本でペットとして飼える/飼えない」までは断定しません。

世界に何匹いる?「確認個体2匹」の意味

ティルカヨの野生個体数はまだ分かっていません。

Reuters(ロイター)によると、研究で確認された生きたティルカヨはこれまで2個体で、ほかに少数のカメラトラップ記録があります。

「研究した生体が2匹」=「世界に2匹しかいない」ではありません。

現在分かっている分布や観察記録自体が非常に限られているため、野生で何匹暮らしているのかを推定できる段階ではありません。

夜行性?何を食べる?生態はまだほとんど不明

ティルカヨの生活については、まだ基礎的な情報も十分ではありません。

少数のカメラトラップ記録からは、夜間に活動する傾向がある可能性が示されています。

また、ふんのサンプルから小型げっ歯類の痕跡が確認されており、ネズミ類などを食べている可能性があります。

ただし、記録自体が少ないため、「完全な夜行性」「ネズミだけを食べる」などとはまだ言えません。

ティルカヨは絶滅危惧種なの?

9月18日時点で、ティルカヨを独立種として評価したIUCN(アイユーシーエヌ)レッドリストの正式カテゴリーは確認できません。

Reuters(ロイター)やThe Guardian(ガーディアン)によると、IUCNは従来の分類でタイガーキャット類を評価しており、北部・南部のタイガーキャットは「Vulnerable(ヴァルネラブル/危急)」として扱われています。

今回の研究でタイガーキャット類が5つの独立した種として整理されたため、ティルカヨを含む各系統を個別に評価し直す必要があります。

研究チームは新しい分類結果をIUCN(アイユーシーエヌ)へ共有しており、今後のレビューで各系統が別々に評価される予定だと報じられています。

ユンガスの生息地そのものは脅威にさらされている

一方で、ティルカヨが暮らすユンガスの森林では、森林伐採、農地拡大、鉱山開発などが脅威として報告されています。

広く分布する1種だと思っていた動物が、実際には狭い地域に暮らす複数種だった場合、それぞれの個体数や生息域は想定より小さくなる可能性があります。

今回の分類研究は、単に新しい名前を付けるだけでなく、それぞれの種に合った保全計画を立てるための土台にもなります。

ティルカヨ発見の本当の意味

今回のニュースで重要なのは、「かわいい新種の猫が増えた」という点だけではありません。

  • ネコ科のようによく研究されてきた動物群にも、未記載の種が残っていた
  • よく似た外見だけでは区別できない進化系統を、ゲノム解析で見分けられる
  • 1種だと思われていた動物を複数種に分けると、保全すべき単位も変わる
  • 博物館標本のDNAも、現在の生物多様性を理解する重要な資料になる

「発見」とは2026年に初めて姿を見たという意味ではなく、長く地域に知られていた野生ネコの正体を、科学がようやく独立した種として認識したということです。

まとめ|ティルカヨは「新しいペット猫」ではなく新種の野生ネコ

  • Leopardus tilcayo は2026年9月17日に新種として正式記載
  • ボリビアのユンガスに生息する小型の野生ネコ
  • 紹介されている個体は頭胴長約46cm・体重約1.4kg
  • 地域では以前から「tilcayo」の名前で知られていた
  • 2016年には研究者が保護施設の個体を調べ始めている
  • 38個体の全ゲノム解析で、タイガーキャット類を5種として整理
  • ティルカヨの系統は約140万年前に他系統から分岐したと推定
  • 現生ネコ科のまったく新しい種の正式記載として100年以上ぶり
  • 研究対象の生体2匹という情報は、世界に2匹しかいないという意味ではない
  • 野生個体数とIUCNによる独立種としての評価はまだ不明

今後、カメラトラップや遺伝子調査が進めば、生息範囲や個体数、食性、繁殖など、現在ほとんど分かっていないティルカヨの生活が明らかになっていく可能性があります。

参考・出典

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