大学の「総長」と「学長」は、どちらが偉いのでしょうか。名前だけ見ると総長のほうが上に感じますが、全国共通でそんな決まりがあるわけではありません。
法律では、大学には「学長」を置くと決められています。東京大学では、その学長にあたるトップを昔から「総長」と呼んでいます。
さらに分かりにくいのがトップの選び方です。2026年の東大では、学内の意向投票で1位だった人ではなく、2位だった藤垣裕子氏が次期総長予定者に選ばれました。「選挙なのに、なぜ?」という疑問も一緒に見ていきます。
- 法律で大学に置くと決められているトップは「学長」
- 東大では、学長にあたるトップを昔から「総長」と呼んでいる
- 「総長は学長より偉い」という全国共通の決まりはない
- 国立大学では学長選考・監察会議がトップを選ぶ
- 意向投票をしても、1位の人がそのまま選ばれるとは限らない
- 2026年の東大では意向投票2位の藤垣裕子氏が次期総長予定者になった
大学の総長と学長の違いは?法律では「学長」
まず覚えておきたいのは、「総長」と「学長」が全国共通の上下関係ではないということです。
学校教育法第92条では、大学には「学長」を置くと決められています。
学長は大学全体の仕事を行い、そこで働く職員をまとめる立場です。簡単にいうと、大学のトップですね。
| 比べるところ | 学長 | 総長 |
|---|---|---|
| 法律上 | 大学に置く役職として決められている | 別の必須役職として決められているわけではない |
| 基本的な意味 | 大学のトップ | 大学が独自に使っている呼び名の場合がある |
| 東京大学 | 制度上は学長にあたる | 実際の呼び名は総長 |
| どちらが上? | 名前だけで全国共通の上下は決められない | |
つまり、「総長」という名前を見ただけで、学長より一つ上の役職だと思わない方がよさそうです。

大学によって呼び方や組織の形は違います。気になる大学があるなら、その大学の公式サイトや組織図を見ると分かりやすいです。
東大はなぜ学長ではなく「総長」と呼ぶ?
東京大学の場合は、昔からの呼び名が今も残っています。
東大の公式説明によると、1886年に帝国大学ができたときに「総長」という役職が生まれました。
現在の学校教育法では大学に「学長」を置く仕組みですが、東大では長く使ってきた「総長」という呼び名を今も続けています。
東大自身も、制度上の正式名称は「学長」だと説明しています。
東京大学では「総長」と「学長」が1人ずついるわけではありません。東大のトップを「総長」と呼んでいます。
京都大学でもトップの呼び名は「総長」です。2026年10月1日には、立川康人氏が第28代総長に就任しました。
東大や京大で「総長」と聞いても、「ほかの大学の学長より偉い」という意味ではないわけです。
学長選挙・総長選挙はどう決まる?国立大学では「選考」が基本
次に分かりにくいのが、大学トップの選び方です。
「学長選挙」「総長選挙」と聞くと、みんなで投票して、一番票を取った人が当選するように思えます。
でも、国立大学は国会議員や市長を選ぶ選挙とは仕組みが違います。
国立大学法人法では、学長選考・監察会議が学長を選ぶことになっています。
この会議は、学外側と学内側から同じ人数の委員を出して作られます。大学の中だけでトップを決める仕組みではありません。
選ばれた人について国立大学法人が申し出を行い、その申出に基づいて文部科学大臣が学長を任命します。
そして、大学によっては選考の途中で教職員による「意向投票」を行います。
意向投票は「1位の人がそのまま当選する選挙」とは限りません。学内で誰が支持されているのかを見る材料の一つとして使われる場合があります。
文部科学省も、国立大学の学長は学長選考・監察会議で選ぶ仕組みだと説明しています。
「選挙」という言葉だけを見るより、最後に誰が選ぶのかを確認した方が分かりやすいですね。
2026年の東大総長選で投票1位が選ばれなかったのはなぜ?
この仕組みがよく分かるのが、2026年9月28日に行われた東京大学の総長選考です。
東大では5人の第2次総長候補者について、投票資格を持つ教職員による意向投票を行いました。
1回目の投票で上位3人にしぼり、続けて2回目を実施。結果は次のとおりです。
| 候補者 | 2回目の意向投票 |
|---|---|
| 染谷隆夫氏 | 1107票 |
| 藤垣裕子氏 | 553票 |
| 山本隆司氏 | 451票 |
| 白票 | 58票 |
票だけを見ると、染谷氏が1107票で1位です。藤垣氏の553票のおよそ2倍あります。
ところが、次期総長予定者に選ばれたのは藤垣裕子氏でした。
「えっ、2位なのに?」と思いますよね。
理由は、東大の総長選考が意向投票だけで決まる制度ではないからです。
総長選考・監察会議は、候補者が出した資料、大学をどうしていきたいかという考え、推薦書、面接、動画での発表、意向投票の結果などをまとめて見ました。
そのうえで藤垣氏を次期総長予定者に選んでいます。



藤垣裕子氏が選ばれた理由は?
東大の総長選考・監察会議は、藤垣氏について、文系と理系をつなぐ考え方や、学内外とのコミュニケーション、海外での経験などを評価したと説明しています。
次期総長としての任期は2027年4月1日から2033年3月31日までの6年間。文部科学大臣による任命を経て、第32代総長に就任する予定です。
ただ、意向投票では1位と2位に大きな票差がありました。
だからこそ、「なぜ藤垣氏を選んだのか」を大学側が分かりやすく伝えることも大切になります。
文部科学大臣も2026年9月29日の会見で、総長選考・監察会議が今回の判断について学内にしっかり説明する必要があるとの考えを示しました。
東大の総長はどうやって決まった?流れを簡単に整理
2026年の東大総長選考をかなり簡単にすると、次の流れです。
経営協議会や代議員会から候補になる人が推薦されます。
総長選考・監察会議が推薦された人を見て候補者を決めます。
資料や推薦書、面接などを見ながら候補者をさらにしぼります。
第2次候補者について、投票資格を持つ教職員が自分の考えを示します。
総長選考・監察会議が資料、面接、動画での発表、意向投票などをまとめて見て1人を選びます。
こうして見ると、「総長選挙」という言葉から想像する普通の選挙とはかなり違います。
東大では、意向投票は選考の途中にある一つの手続き。その後に総長選考・監察会議が判断します。
意向投票で1位でも選ばれないなら意味はない?
ここまで読むと、「1位でも選ばれないなら、投票する意味がないのでは?」と思うかもしれません。
ただ、東大は2026年の選考でも意向投票の結果を判断材料に入れています。
教職員が候補者をどう見ているのかを知る材料にはなる一方、それだけでトップを決める制度ではないということです。
国立大学では、大学の中だけではなく、学外側の意見も入る形で学長を選びます。
そのため、投票結果と最後の結果が違ったときほど、「なぜこの人を選んだのか」という説明が重要になります。
文部科学省も、選考の理由や進め方を説明することが、学長選考・監察会議の責任につながるとしています。
私立大学の総長と学長も同じ?大学によって違う
ここまで説明してきた学長選考・監察会議は、国立大学法人の仕組みです。
私立大学では、学校法人や大学ごとの決まりによって、総長と学長の使い方が変わります。
たとえば早稲田大学では、学校法人のトップである理事長と、大学のトップである学長を同じ人が務め、その人を「総長」と呼んでいます。
つまり、東大の「総長」と早稲田の「総長」も、名前は同じでも仕組みは同じではありません。
特定の大学について調べたいときは、公式サイトの「組織」「役員」「学長選考」「総長」などを見ると、その大学での意味が分かりやすいです。
まとめ
- 学校教育法では、大学には「学長」を置くと決められている
- 東大では学長にあたるトップを昔から「総長」と呼んでいる
- 「総長は学長より偉い」という全国共通の決まりはない
- 国立大学では学長選考・監察会議が学長を選ぶ
- 意向投票をしても、1位の人がそのまま選ばれるとは限らない
- 2026年の東大では意向投票2位の藤垣裕子氏が次期総長予定者に選ばれた










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